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2007年06月26日

Appreciative Inquiry (AI)とは

組織開発を考える上で、まず問いかけられる質問は「現状の問題点は何か?」が最も多いであろう。改善策を見出すために何が障害になっているかを考えるからだ。しかし、Appreciative Inquiry (AI) というアプローチは、組織内の「解決すべき問題」というネガティブな部分ではなく、組織や個人の持っているポジティブな面に焦点をあて、対話によって組織の理想像を具体化させていく。今日までにノキアやヒューレット・パッカード、英国航空、米国海軍など多くの組織で導入され、成功実績を上げている。

■■■Appreciative Inquiry(AI)とは■

Appreciative Inquiry (AI)は、1980年代後半に米国オハイオ州・Western Reserve UniversityのDavid L. Cooperrider博士らが提唱したものである。Appreciateという言葉は「価値を見出す、価値が深まること」、そしてInquiryは「探求・発見する、新たな可能性を導き出す問いかけをすること」を意味する。

Appreciative Inquiry とは、「人や組織における最大の強みを共同で調査していくこと」と定義できよう。経済、ビジネス環境、さらには生活環境面という点において、最も効果的に機能する場合の個人や組織のあり方は何かを共に探求するのである。Appreciative Inquiry では、「問いかけ」を通じて組織や社員のポジティブな面、内在する可能性を認識して強化していく。こうして組織内で対話していくことにより、組織の理想像、ビジョンが構築され、それに向かって何をすべきかがわかってくる。また、Appreciative Inquiryのプロセスでは、組織内の一部の社員だけでなく全員を巻き込む。 理想とする組織のあり方やビジョン構築が社員全員で共有でき、改革への意識のレベルアップが期待できるのだ。

■■■Appreciative Inquiry (AI) における4D■

問題解決型アプローチでは「改善すべき問題」が出発点であり、問題の特定、原因分析・・・と着手していく。 これに対してAppreciative Inquiryでは、インタビューや対話を用いながら下記の4つのプロセスで、前向きな変革の実現を可能にしていく。

• Discover ・・・過去や現状における成功体験などから組織の価値や強みを見出す。
• Dream ・・・ 組織や個人の持つ長所や内在する可能性をもとに、組織の理想像・ビジョンを描く。
• Design ・・・ その理想像やビジョンを具現化させ、組織の設計をする。 
• Destiny ・・・ その理想像に向けて組織改革を実践し、持続的に取り組む。

■■■なぜAppreciative Inquiry (AI)が効果的なのか■

ビジネス環境の変化が激しくなり、また、複雑化する中で、企業は常に変革していく能力を求められている。組織を「問題がある存在」と捉えれば、常に組織のネガティブな部分に着目して取り組まなければならず、否定的や消極的な観点から逃れることが困難だ。それに対して、組織を「強みや可能性をもつ存在」とポジティブな思考で捉えると、組織内のモチベーションやエネルギーは高まる。 また、Appreciative Inquiry では全員参加型で組織の理想像へ向かっていくので、単なる問題解決にとどまらず組織全体が一丸となった改革が可能だ。組織の全員に当事者意識が芽生え、組織の文化や持続的な成長を作り出していけるからだ。このように問題解決はもとより自らの方向性さえも生み出していく力を引き出せるAppreciative Inquiryは、大企業をはじめとする多くの企業で効果をだしているのである。

2007年06月28日

5つの視点:チェンジ

チェンジには「変える」「変わる」二つの意味があります。
皆さんはどちらの意味で使いますか?
リーダーやコンサルタントは「変える」という意味で使うことが多いように思います。
しかし我々PFCは「変わる」の意味でしか使いません。
「チェンジ」は
・与えられるものではなく、自ら変化するもの
・表面的な変化ではなく、内面的で本質的な部分の変化であるべきと考えるからです。

古いものを新しいものに書きかえたり取りかえたりすれば、「変える」ことはできます。
しかし、「変わる」ためには、変化を意識的に起こし、変わるための意識や活動や状態を継続するようサポートし、変わるための一連の動きをマネジメントすることが必要です。
これを「チェンジマネジメント」と呼んでいます。

ここではチェンジ、特にチェンジマネジメントに関してのPFCの考え方を
次の3点を中心にご説明します。
1)「変える」のではなく、“「変わる」をマネジメントする”
2)真のチェンジのためには、放任と制御のバランスをとる
3)チェンジの落とし穴に留意してマネジメントする

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1)「変える」のではなく、“「変わる」をマネジメントする”
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我々PFCでは、チェンジという言葉は「変わる」の意味あいでしか使わない。
いくら組織を「変える」ことを行っても、組織が「変わる」ことがないことは、皆さんも経験されているのではないだろうか。
「変える」という言葉には、外から行うニュアンスがある。また、一過性でワンショットのアクションの響きも残る。組織を「変える」という場合は、対象として組織のハード(組織の形態や構造)を指していることが多い。

一方「変わる」という言葉には、実質的な変化がもたらされているニュアンスがある。組織が「変わる」という場合には、真に質的な変化が起こり、組織のソフト(組織を構成する人々の意識や文化など)までをも含めている。

「変わる」ためには、組織を構成する人の内発的な動機と、ある程度の時間が必要不可欠だ。そこで、“チェンジマネジメント”という発想が大切になってくる。
チェンジマネジメントとは、即ち、「変化を意識的に起こし、変わるための意識や活動や状態を継続するようサポートし、変わるための一連の動きをマネジメントする」取組みをいう。
この取組みでは、合理的な計画を立て合目的的な策を施すだけではなく、ひとりひとりの心理への配慮や、組織のダイナミズムへの考慮などを、終始十分に行っていくことが求められる。

我々が組織“改革”ではなく組織“開発”と呼んでいるのも、「変わる」ためには内発的で時間のかかる取組みが必要との考え方を持っているからだ。従って、チェンジマネジメントは、組織開発の取組みそのものと言っても過言ではない。

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2)真のチェンジのためには、放任と制御のバランスをとる
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チェンジマネジメントは、「変わる」、即ち、真の変化をもたらすために必要な一連の動きをマネジメントする取組みと表現した。それはどのような取組みなのか。

「チェンジ」と「マネジメント」は、よくよく考えてみると、互いに相容れない言葉である。チェンジには、放任が必要であり、マネジメントとは、制御することを言う。しかし、まさに放任と制御の間にこそ、本質が横たわっている。

チェンジは“旅”に喩えられる。チェンジは、内発的な動機とある程度の時間が必要不可欠なので、まさに旅の喩えは言い得て妙と言える。それゆえ、チェンジマネジメントは、旅のマネジメントのようなものと思うとよい。
ほったらかしであれば、よほど自立した“旅人”以外は、立ち往生してしまう。目に見えない旅なので、何らかの仕掛けやサポートがないと、ほとんどの人がそもそも旅に出られないまま終わってしまう。一方、ずっとつきっきりの添乗員の指示に従う旅ではつまらない。何より、行って帰ってきても本人に何の変化も起きない。
実際の組織のチェンジの現場では、どうしていいか分かっていないために、あるいは遠慮や躊躇からほったらかしにしてしまうか、つきっきりの添乗員のように断片的なイベントへの参加を押し付けるだけでマネジメントしているつもりになっている変革推進者は少なくない。

それでは、放任と制御のバランスの妙を押さえたチェンジマネジメントを行うために、どのようなことをすべきか。ここでは、いくつかあるチェンジのステップから、まず最初のステップで行うことを2つ取り上げ具体的に説明しよう。

●旅の向かう先を描く+緊迫感を醸成する
どんな旅でも、どこからどこに行くのかを考えることからプランは始まる。チェンジも同じだ。しかし、道中や旅先で何をしようかの詳細は考えているが、では「どこ(現在いる場所)からどこ(向かう先)に行こうとしている旅なのか」を問うたときに、明確に答えられないことが多い。「○から○へ」、チェンジのテーマはシンプルに表せるはずだ。
向かう先をチェンジのビジョンという。ビジョンは重要だが、ビジョンだけ示しても実際にはチェンジが起きずに終わることが多い。
向かう先がどんなに素晴らしい世界だと示しても、組織や人は動かない。ふつうは現在いる場所が、何とも居心地がいいものだからだ。そこで、「なぜ現在いる場所にこのまま留まっていてはまずいか」を心底思い知ってもらい、これを「変わる」の原動力とすることも欠かせない。

●フォローの風の活用+アゲインストの風への対処
旅の途中に巻き起こるであろう“フォローの風”と“アゲインストの風”の全体像を予め描いておくことも、チェンジマネジメントの最初の重要な取組みのひとつだ。
チェンジでは、課題を明らかにし、解決策や取組み内容を考えることは、もちろん中心となる活動だ。しかし、策や取組みの一つ一つを考えること以上に、風の全体像を意識することがチェンジマネジメントにとっては不可欠な作業だ。フォローの風をうまく使って、ひとりひとりの「変わる」気持ちを醸成し、抵抗勢力に対処しながら、アゲインストの風を何とか弱めていく。このようなことを、予め可能な限り想定しておき、意識して行っていくことがチェンジマネジメントに求められる。

これら2つの例で、チェンジマネジメントに求められる放任と制御のバランスのイメージは沸いただろうか。
現在いる場所から動こうとするエネルギーを生むための緊迫感の醸成と、向かう先を明確にイメージし描き示すことについては、絶対に欠かせないので、活動の強いコントロールが必要だ。しかし後はある程度放任し、自主的な動きを待つ。
また、フォローの風とアゲインストの風をうまく扱っていくことも、チェンジの成功に欠かせないので、意識しマネジメントすることが必要だ。しかし策や取組みのひとつひとつは任せる。
このようなバランスを保つことが、うまいチェンジマネジメントだ。


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3)チェンジの落とし穴に留意してマネジメントする
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最後に、数多くのチェンジがはまってしまう“落とし穴”を、我々の経験から整理したので、特に主要なものを紹介したい。
これらの落とし穴を予め意識し、これらに留意して進めることが、まさにチェンジマネジメントだ。

落とし穴1:プロジェクトの目的や成果イメージが不明確なままスタートする
落とし穴2:既存のプロジェクトや取り組みとの関連性が曖昧で、社内が混乱する
落とし穴3:手法が企業変革を可能にするという思い込みが強い
落とし穴4:上層部や担当者のリーダーシップが欠如している
落とし穴5:手法を実施すること自体が目的になり、「やりっぱなし」に終わる

通常我々は、チェンジの最初の段階で、これらの落とし穴について、経営陣や変革推進者達と十分に話し合いをする。落とし穴についての理解を深め、これから始まるチェンジについてのイメージをすり合わせ、落とし穴を回避するための策を考えるためだ。

その際に通常我々が、経営陣や変革推進者達に投げかける問いを、ここでは皆さんにも投げかけたい。

落とし穴1:目的・目標
・目的:貴社は、なぜ今これに取り組むのか?
・目標:このプログラムが完了した時点で何を得たいのか?財務的、あるいは定量的な目標値は?定性的な目標は?

落とし穴2:基本的位置づけ
・オーナーシップ:この取組みのオーナーは誰なのか?
・位置づけ:社内の他のプロジェクトとの関係は?他の活動ではなぜ駄目なのか?これは「課外活動」なのか業務としての活動なのか?
・対象:全社員を巻き込むのか否か?派遣社員なども巻き込むのか?

落とし穴3:コミットメント
・リーダーの本気:上層部はどれほど本気なのか?社員に上層部の本気度をどのように伝えるのか?
・推進チーム:強力な推進チームを有しているか?その推進チームに活動に必要な権限やリソースを与えているか?

落とし穴4:取組みの加速化
・巻き込み:社員たちをどのように励まし動機付けするか?仕事が増えただけと思う社員にはどう対処するか?
・障害への対処:改善策実行段階での障害をどのように取り除くか?

落とし穴5:成果の把握
・成果の把握:成果をどのように把握していくか?
・成果の評価:成果をどのように評価するか?フォーマルな評価とインフォーマルな評価

さて、チェンジとチェンジマネジメントについて考えてきた。
最後に皆さんに質問して終わりたい。
皆さんの考えるチェンジは、「変わる」だろうか?
つい“「変える」”という発想になっていないだろうか?
“「変わる」ために必要なこと”を考え実践する意識を、変革推進者は保ち続けてほしい。(PFC取締役 松村卓朗)

2007年06月29日

5つの視点:ダイバーシティ

ダイバーシティとは、社員一人ひとりが持つ様々な違い(性別・国籍・年齢・学歴や職歴等)を受け入れ、それぞれを価値として活かすことで企業の競争力に活かそうという考え方で、組織の開発に欠かせない視点のひとつです。

ここではダイバーシティに対するPFCの考え方を次の3点を中心にご説明します。
1)「ダイバーシティ」の目的は、変化に強い組織づくり
2)女性の数を増やすことだけがダイバーシティ推進活動ではない
3)ダイバーシティ推進活動の成功のために体制の見直しを

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1)「ダイバーシティ」の目的は、変化に強い組織づくり
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ダイバーシティ推進を課題にあげる企業が増えてきましたが、その理由は「社会的要請に対する対応」あるいは「少子化対策」といった、どちらかというと受身的な姿勢に留まっているのが現状です。

一方、世界的な優良企業では、このダイバーシティへの取り組みを、「経営戦略の一部」として位置づけ、変化の激しい多様な顧客に対する対応力を高めるべく、ダイバーシティを「企業の競争力の源泉」として捉えています。

「女性・障害者・外国人などの多様な人材の活用はコスト増につながる」と二の足を踏んでいる経営者も少なくない一方、この課題に積極的に取り組んでいる企業は業績がよいということを実証する調査結果も出ています。ダイバーシティは、攻めの戦略の一環として考えるべきものなのです。

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2)女性の数を増やすことだけがダイバーシティ推進活動ではない
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多くの企業では、「女性管理職比率を3割に増やす」「新卒女性の割合を5割にする」などといった数値目標を設定し、それを達成することだけをダイバーシティ推進活動としていますが、これは本来のダイバーシティ推進の意味を取り違えた考え方です。ダイバーシティが本来目指すところは「様々な違いを受け入れ、それを価値として活かす」ことであり、単に数を増やしても「企業競争力の源泉」には到底およびません。

また「ダイバーシティ推進」と聞くと、「うちの部署には女性や外国人はいないので、関係ない」といった声もよく出ますが、ダイバーシティにはもっと広い意味があります。組織の中には、世代の差・中途採用者と永続勤務者・合併企業の2つの企業文化差・雇用形態などといった様々な多様性が存在しています。
企業における真のダイバーシティ活動とは、多様性が生み出す人々の考え方や価値観の違いをいかに経営に活かすかであり、ダイバーシティはすべてのビジネスパーソンに関わりがある課題であることを社内に浸透させなくてはいけません。

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3)ダイバーシティ推進活動の成功のために体制の見直しを
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ダイバーシティ推進には、今まで変化や多様性に無関係だった人たちに意識改革が求められます。また、ダイバーシティを受け入れ、それに対応しながらビジネス成果を出すことは容易なことではなく、「違いを活かすためのスキル開発」が欠かせません。
つまり、ダイバーシティ推進とは、一種の全社的変革活動なのです。

しかし、現実には、これほど難しい活動であるにも関わらず、今まで大規模変革プロジェクトに携わったことがない女性社員が集められ、推進役を任されているのが、多くの企業の実態です。事務局や推進チームの体制そのものが、多様なメンバーで構成され、そのメンバーが変革マネジメントについて学び、変革に必要な権限とサポートを周囲から得ることが、ダイバーシティ推進活動には最低限必要なのです。